岡田武史 日本代表監督インタビュー

世界ベスト4をつかみ取る

 

ワールドカップイヤーの今年、東アジアサッカー選手権2010 決勝大会も開催される。

日本代表の岡田武史監督が、大会へ向けての決意と抱負を語った。

 

「本大会の目標は チーム力のベースアップ」

 

─中国、香港、韓国について、ぞれぞれどのような印象を持っているか教えてください。

 

岡田 最初に対戦する中国は、若い監督が就任しました。正直、どんなサッカーをするか未知数です。ただ、イングランドのプレミアリーグでレギュラーになっている選手がいるなど、個人能力が高い選手がいます。圧倒するのは難しいでしょうが、しっかりと勝ちきる戦いをしたいですね。香港は昨年に2度対戦したので、よくわかっています。韓国人の監督になってから、すごくファイトしてくるチームになりました。ここではちょっとメンバーを変えて戦ってみようかなと考えています。韓国戦については、中国戦、香港戦の結果をみて、ベストメンバーで臨みたいと思っています。

 

──今大会の3試合には、どのような狙いを持って臨むのでしょうか?

 

岡田 我々が目指す方向性は、すでに決まっています。ですから、現在のチーム力のベースアップをはかることに尽きます。今大会の前に、ベネズエラとのキリンチャレンジカップ2010があります。国内組の主力が集まって2010年最初の試合になるので、しばらく離れていた選手たちがどれだけ日本代表のサッカーを覚えているか、おさらいをしたいと考えています。そして、中国戦、香港戦でベースアップしていき、韓国戦ではそのときのベストメンバーで戦い、自分たちの実力を出し切る。そうした強化の流れを考えています。

 

──1月6日のイエメン戦で活躍した若い選手たちは、香港戦に出場する可能性があるということでしょうか?

 

岡田 選手の状態や大会の流れがあるので、そうは言い切れません。あくまでも、起用するチャンスがあれば、と想定しています。我々は1月25日から合宿を行っています。練習でのパフォーマンスをみて、試合に起用するかしないかを決めることになります。僕は特に、無理して新しい選手を発掘しようとは思っていません。新陳代謝が必要なのは、マンネリ化するからです。しかし、今の日本代表は高い目標に向かって必死になって戦っています。現状に満足してマンネリ化すると恐れはないと思っています。もちろん、現在の選手を追い抜く選手がいれば、話は別です。

 

「相手にとらわれず 世界ベスト4のゴールだけを見据えて」

 

──FIFAワールドカップで対戦する相手国が決まりました。今後はポイントを絞った強化も行っていくのでしょうか?

 

岡田 それは5月に入ってからですね。我々は対戦相手によって戦い方を変えることはしません。もちろん、細かくポイントを絞った強化は行います。しかし、以前から世界の強豪と呼ばれるチームに勝つために、ずっと強化してきました。ですから、今からチームに存在するベーシックな戦い方を変えるつもりはまったくありません。

 

──対戦相手によって、なにか特別な策を講じることはないということですか?

 

岡田 例えばカメルーンなら、エトーというストライカーがいます。彼は左サイドに流れる傾向がある。そうすると、前線の選手は右サイドから追っていく。同サイドから縦にエトーへボールを入れられるのはイヤですから・・・という程度のことです。守備ラインを下げて守ろうとか、そういうことはまったく考えてないです。監督にとって一番大事なのは『策』を講じることではなく、チームの根幹を作ることなのです。

 

──では、FIFAワールドカップをどう戦うかの構想は、すでに頭のなかにあるのでしょうか?

 

岡田 これはよく話すのですが、うさぎと亀の競争の話がありますね。うさぎはサボッていて亀に負けたといいますが、違うのです。うさぎは亀を見ていたから、負けたのです。対戦相手を見て走っていたから、負けた。対して、亀はゴールを見て走っていました。野球でも将棋でも企業でも、良い結果を残す人はみんな目の前の敵や売り上げに必死になると同時に、高い志や夢を持っているのです。僕は今の日本代表に、亀のゴールを目指させているんです。『策』を講じて目の前の一試合に勝ったとします。それだと、ベスト4にはなれない。ベスト4になるためには、やっぱりゴールを目指さないといけない。以前は対戦相手ばかり見て『策』を講じて勝っていた時期もありました。だけど今回は、ゴールを目指しています。カメルーン、オランダ、デンマークと聞いても、なにも怖くありません。当然、彼らとの戦いで出る結果には責任を取ります。だけど、我々が目指している目標はもっと別のところにあります。ベスト4を目指すと言っている後ろには、日本人らしい、いや、日本人にしか出来ないサッカーで強豪を倒し、世界を驚かすという目標があります。目の前の対戦相手に勝つことばかりを考えて、一試合に勝った、負けたではダメなんです。僕はそう考えて日本代表を強化しています。

 

 

※このインタビューは、2010年1月12日に行われました。